ヨーロッパ諸国ジェット機

バッカニア(イギリス)

イギリス海軍が空母搭載用の全天候超低空艦上攻撃機として開発。
開発は当時のブラックバーン社が担当。
原型機は1958年に初飛行した。
イルカのように波打ったエリア・ルール方式の胴体と、三日月翼を組み合わせた、T型尾翼の胴体後端の左右に開くエア・ブレーキを配置するなど、極めて特異な設計を採用。
そのため、特徴あるシルエットをしている。

最高速度は海面上でマッハ0.9(1101km/h)と低速であったが、低空飛行能力、離着陸性能は優秀であった。
海軍を中心に合計173機(空軍向け49機を含む)がイギリス軍に納入されたが、イギリスが空母を廃止したため、後に全て空軍に移管された。
湾岸戦争でも一部が低空攻撃に使われた。
現在は全て退役している。なお、南アフリカ空軍も16機採用したが、こちらも全て退役したという。
この機を見ると何となく「アヒル」か「カルガモ」を思い浮かべるのであるが?
「ラトニング」、「ハリヤー」を始め、やはりイギリスの飛行機はそれなりの性能は有するのであるが、デザインは今、1つと思うが。


ハリアー(イギリス)
ヘリコプターのように垂直に離着陸ができる飛行機があったら、長大な滑走路も要らず、広大な飛行場面積も要らない。
空母なんかも要らなくなる。戦場ではどんなところでも降りられ、飛びたてられるのでこんな理想的なことはない。
特にイギリスではコストが高い大型空母の建造維持費削減を念頭に、安価な軽空母での運用を考えた。
そこで、多くの国が垂直離着陸機の開発をした。
しかし、ことごとく失敗、何とかものになったのが、旧ソ連のフォージャーとこのハリアーだでけであるが、フォージャーはもう作っていないらしい。
何らかの問題点があったのであろう。
したがって、このイギリスが開発したこのハリアーのみが、世界唯一のものである。
しかし、現在においても、欠点は多くあり、まだ完全なものとは言えないともいう。
特に不整地からの離陸は現実には大量の砂を舞わすため不可能という。

原型機は1960年に初飛行したという。現在、イギリス、アメリカを始め、数ヶ国で戦闘機や攻撃機として運用されている。
多くの国がチャレンジし、失敗したこの手の機種をしつこく開発していったイギリスも大した根性であるが、予算の制限等、それなりに苦労があり、並の努力ではなかったという。
まず、技術的には、エンジンに垂直離着陸のため、大出力が必要で、重量が増し、その分、通常の戦闘機に比べ性能が劣ってしまう。
また、垂直排気で巻き上げた砂・ゴミなどをファンが吸い込み、エンジンが故障することもあり、前線での利用にも制約があるということである。
多くの国が挫折した原因は垂直離陸用と水平飛行用の2つのエンジンを持つタイプで開発し、大型化してしまったことという。
これに対して、1台のエンジンを推力方向変換するタイプはハリアーのみである。

苦難の末、試作機ハリアーGR.1は1966年8月に初飛行を行い、1968年7月から部隊配備が開始された。
イギリス海軍では、軽空母での使用を考え開発したので、1971年には、艦上試験をが行われ、シーハリアーFRS.1が開発され、1978年から運用されている。
シーハリアーFRS.1は、GR.1に比べ、対艦・対空レーダーを装備したため、機首が鋭くなり、視界確保のため、コクピット位置が高くなり、水滴型キャノピーとなっている。

アメリカ海兵隊ではハリアーGR.1の改良型AV-8Aを採用し、マクダネル・ダグラス社(現・ボーイング社)で製造を行っている。
この際、軽量化を進め、 AV-8B Harrier-II(ハリアー・ツー)としている。
右の写真はアメリカ海兵隊の同機である。
この機種を今度はイギリス軍が逆輸入し、これをベースにGR.7を開発している。
現在までの製造数は800機以上という。
初期のハリアーの武装は、空対空ミサイルのみであったが、30o機関砲が追加された。

しかし、大重量のエンジンを積載しているため、兵器搭載量が少なく、ジェット排気量も多く、赤外線誘導ミサイルの追尾を受け易いという欠点があるという。
ホバリングや極低速時などの操縦も熟練が必要であり、今までに訓練で1971年から45人が死亡している。

ハリアーはフォークランド紛争での活躍が特筆される。
事故や操作ミスで失われた機はあったが、直接の戦闘での喪失機はなく、アルゼンチン軍機を24機撃墜したという。
全て迎撃戦での戦果であり、新型のAIM-9Lサイドワインダーの性能によるものと言われている。
しかし、相手が全体に近代的装備に遅れをとっていたアルゼンチンであったため成功したと評価され、高性能な軍用機の迎撃ならこうは上手くは、行かなかったとされている。
その証拠に湾岸戦争では、逆に7機中、5機撃墜されるという苦戦をしている。
全長: 13.90 m 、全高: 3.45 m 、最大離陸重量: 11,500 kg 、エンジン: ロールスロイス社製 (ペガサス10) 推力偏向ターボファン・エンジン ドライ推力: 84.5 kN × 1
最大速度: 1,185 km/h 、航続距離: 2580 km 、固定武装: 30mm機関銃 ×1 、ミサイル: AIM-9 サイドワインダー、AGM-65 マーヴェリックなど

 ライトニング(イギリス)

イギリスが独力で開発、生産した唯一のマッハ2級速戦闘機であるが、性能は優れていたものの失敗作という評価をされている不幸な機である。
デザイン的にもいかにもイギリス機らしいダサさである。
原型は超音速実験機P−1であり、これが1958年11月にマッハ2の高速性能をしたため、設計変更を行い、1960年7月にライトニングF.1の形式名で戦闘機として部隊配備された。
主翼に特徴があり、デルタ翼の後援を三角形に切り落としたような極めて変わった形状をしている。
主脚は第二次大戦の戦闘機のように主翼下面に折りたたんで収容する。
このため主翼下の兵器搭載スペースが少なく、かつ、翼荷重が大きくなり、翼下面の懸吊重量に限度があり、兵装の搭載量と種類が著しく制限されてしまった。
苦肉の策として増槽燃料タンクを主翼の上に載せるという方法を採用した。
エンジン配置も上下にずらして2段配置するという変わった搭載方法をとっており、前方空気取り入れ口から後部のエンジンまでエアダクトが走っている。
このため、非常に胴が太いシルエットとなっている。
性能的には優れた加速性と高速性、運動性を持ち合わせていたが、兵装の搭載量が少なく、航続距離も短いという欠点があり、短命に終わり、生産数も255機と少ない。
イギリス本国以外ではサウジアラビアが34機とクウェート12機のライトニング輸出型F.53を採用している。
全長16.84m、全幅10.62m、全高5.97m、総重量17.25t、航続距離2500q、最高速度マッハ2.0 武装 30mm機関砲×2門 空対空ミサイル×2基 爆弾搭載量908kg(ユナイテッド・ディフェンス http://www.eurus.dti.ne.jp/~freedom3/ の記事を参照した。)

ダッソー ミラージュF1(フランス)
フランス ダッソー社が開発した軽戦闘機。
ミラージュ戦闘機と言えばミラージュVに代表されるデルタ翼が特徴であるが、このF1は、高翼配置の後退角のついた翼というオーソドックスな形である。
ここにフラップと前縁スラットをつけることで、離陸滑走距離は30%短くなり、ミラージュVに比べて性能が向上したという。
単発エンジンの戦闘機であるため、安価である。性能的にはF16とほぼ同等ではないかと言われている。
1966年12月に初飛行し、1973年よりフランス空軍への配備が開始されたが、生産数は750機のうち500機は輸出されたという。
実線経験も豊富であるが、その実戦経験を積み上げたのが、イラクである。
イラン・イラク戦争ではイラン空軍機との交戦で数機が撃墜されているが、中射程のシュペル530FミサイルによりF-4をかなりの数撃墜している。
しかし、湾岸戦争では地上でかなり破壊されている。南アフリカでは対ゲリラ攻撃に使われているという。
武装は、30mm機関砲2門を固定武装とし、空対空ミサイル4発、通常爆弾または空対艦ミサイルも搭載可能という。
全幅:8.4m 、全長:15.0m、全高:4.5m、エンジン:SNECMA Atar 9K-50 (45,960kg/アフターバーナー時7,200kg)1基
最大速度:マッハ2.1 、固定武装:30mm機関砲2門 、シュペル530F空対空ミサイル、R550マジック空対空ミサイル、搭載量6,300kg

ダッソー ミラージュ 2000(フランス)

フランスのダッソー社製の迎撃戦闘機。
ミラージュ戦闘機(F1を除く。)の特徴である無尾翼デルタ式の単発のジェット戦闘機である。
後継機のラファール戦闘機が登場してきているが、フランス軍の主力は、現在、この機である。
ダッソー社はミラージュVに代表される無尾翼デルタ機が特徴であったが、機体の小型軽量化、飛行特性の安定性などにメリットがあるが、STOL性能、低空飛行、機動性などの性能に課題があったと言われる。
このためミラージュ F1にデルタ翼は採用されなかった。

しかし、SNECMA社製 M53エンジンの採用、機体構造材への複合材の採用による軽量化等、最新の技術ではデルタ翼機であってもこれらの欠点の克服は可能となり、1972年から再度、得意のデルタ翼機の開発を開始、1983年には量産機の納入が可能な状況となった。
フランス空軍での実戦配備は1984年、その他、アラブ首長国連邦、インド、エジプト、台湾、ギリシャ、ペルー、ブラジル等にも輸出され、合計生産機数は600機ほどである。


主なスペック
乗員: 1-2名、 全長: 14.4m 、翼幅: 9.1m 、全高: 5.2m 、翼面積: 41m2、 自重:7.5t 、最大離陸: 17t 、
エンジン: SNECMA M53-P2 ターボファンエンジン 1基 推力: 6,600(9,700)kgp(A/B)、 戦闘行動半径: 1,480km 、
最大速度: 2,340km/h (マッハ: Mach 2.2 )、上昇限度: 16,750m 、
固定武装: 30mm機関砲 2門 、
9箇所のパイロンに 爆弾:6.3t 、AM39 エグゾセ、 Super 530中距離空対空ミサイル 、MICA  、68mm ロケット弾等を搭載。


サーブ ビゲン(SAAB 37 スウェーデン)

スウェーデンのサーブ社が製造したカナード翼と三角形の主翼(デルタ翼)を特長とするスウェーデン空軍の戦闘機。
Viggenは稲妻、電光を意味する。サーブ ドラケンの後継機として1964年から開発が行なわれ、1967年に初飛行をした。
基地が攻撃されて使用できない場合も想定し、高速道路などからも離陸できるようなSTOL性能を有することを狙って開発した。
その結果がこの特徴ある翼形状である。上から見ると、大小2つの三角形を重ねた凧のような形である。
日本海軍が試作した「振電」の翼配置に似ている。荒地でも離着陸できる車輪もその一環としてのものである。
これ以外の特徴としては、低空で超音速飛行が可能であること、高空ではマッハ2の高速が出せることである。

当時は対ソ連の戦略があり、アメリカの戦略の一翼を担っていた。このため、ビゲンの開発に当たってはアメリカが技術支援を行い、アメリカのノウハウが取り入れられている。
エンジンのRM8A (AJ 37) とRM8B (JA 37) は、プラット&ホイットニー製のジェット旅客機用エンジンJT8Dにアフターバーナーを取りつけるなどの改造を施したものをボルボ・エアロがライセンス生産したものである。
ただし、ベースが旅客機用エンジンであるため、胴体が太くなっている。
この強力なエンジンと特徴ある翼配置で500mという短い着陸滑走距離を実現している。

スウェーデン空軍では、各種型あわせて約300機を1980年から1990年にかけて配備した。

後継世代であるJAS 39 グリペンの登場で次第に姿を消し、2005年11月25日の飛行を最後に退役した。
ビゲンの評価は高かったが、輸出はされていない。
この理由はエンジンが半米国製であり、両国の混血機という性格があった。このため、アメリカの輸出市場が奪われるため、アメリカからの外交圧力があったともいわれている。
欠点としては航続距離・滞空時間が短かいという点であるが、迎撃戦闘機という性格から仕方ないものかもしれない。

全長: 16.4 m、全高: 5.6 m、翼幅: 10.6 m 最大離陸重量: 20,450 kg 
エンジン RM8A JT-8D 低バイパス比ターボファンエンジン1基 推力: 72.1 kN  6,690 kp アフターバーナー使用時推力: 125.0 kN
 最大速度: 2,231 km/h  航続距離: 2,000 km 実用上昇限度: 18,000 m
武装 30 mm機関砲1門 150発 ミサイル: RB 04E 、RB 05 、RB 75 マーベリック 空対地ミサイル(AGM-65)等 120kg 爆弾

SEPECAT ジャグア GR MK.1/A(イギリス、フランス共同開発))

開発コスト低減を狙い,1965年、英仏共同開発で誕生した攻撃機(戦術支援戦闘機)。性格的には日本のF1やF2に似る。
離陸距離600mという優れたSTOL性能を持つ。草地からでも離陸できる車輪構造を持つ。
エンジンは双発でこれも共同開発したロールスロイス/チュルボメカRB172アドーア・エンジン 推力2.4tを搭載する。
速度はそれほどでもなくマッハ1.6程度に留まる。
武装は30oアデン砲2門を持ち、5箇所のパイロンにミサイル、爆弾を合計4.5t搭載できる。
複座の練習機タイプも含め5形式がある。
イギリス、フランスが各200機採用しており、フランスは空母搭載も考えたが断念したという。
電子制御方法、レーダーは英仏で異なるという。全長16.83m、全幅8.69m、全高4.89m、最大離陸重量15.7t
モデルはイギリス空軍第38航空隊所属機。