東北の風景

大内宿(福島県下郷町)
芦の牧温泉を過ぎて、西の山間に入ると、山間の小盆地に大内宿がある。
ここは会津若松と日光・今市方面を結ぶ南山通り(会津西街道)の宿場。

誰もいない早朝なら、江戸時代の旅人が出てきてもおかしくはないような感じだ。
そのような風景はタイムスリップしたような錯覚に陥るだろう。

明治17年に阿賀川沿いに国道121号が開通したため、ここは旧街道筋になってしまったという。
しかし、その結果、この宿場町がそのままタイムカプセルの中に入って現在に残された。

この南山通りは、会津藩が江戸時代初期に会津と江戸を結ぶのに利用した幹線道路であり、廻米などの物資の輸送や参勤交代で賑わった重要な街道であった。
大内宿が宿場として整えられたのは、江戸時代初期と推定され、本陣・脇本陣がおかれたという。

旧街道に沿った旧宿場を中心とする南北約500m、東西200mの範囲が保存地区に指定されている。
本地区の町並みの特徴は、寄棟造の建物が道路と直角に整然と並べていることである。

主屋は道路から空地を設けて敷地の北側に後退して建ち、南は空き地をおいて奥の土間入口への通路となっており、倉や納戸は主屋の奥に建つ。
主屋の多くは江戸時代後期から明治にかけて建築されたもので、それほど古いものではないが、道路側に半間幅の縁をつけ、その奥の二室を座敷としている。
道路の中央には広い溝が設けられ、宿場の用水として利用されたが、明治19年になって埋め立てられ道路の両側に側溝が掘られ洗い場を設けるなどの変遷があったという。
この町並みは会津地方の宿場形態の典型的なものだそうで、その多くが失われた今日、ここだけが往時の姿を良く残しているという。
また、周囲の社寺や水田などの自然環境とも一体になって優れた歴史的景観を今に伝えている。(下郷町HP参照)