湊城(秋田市土崎港)
雄物川の河口付近、土崎湊は日本海海運の重要な港であり、雄物川の水運による物資集積供給拠点であった。
その物流拠点を管理する城が湊城であったという。

完全な平城であり、慶長9年(1604)に佐竹義宣が廃城にした後は完全に市街化してしまい、左の写真に示す現在の土崎神明社の地に本郭があったことは間違いないようだが、遺構は全く分からない。

しかし発掘調査によって城の遺構が確認されているという。
築城時期は不明であるが、応永2年(1395)、十三湊の下国安藤氏の一族、安藤盛季の弟鹿季が、この地に入り拠点としたという。
日本海の海運の十三湊の前または後の寄港地がこの土崎湊であり、海運がもたらす膨大な利益を知った安藤氏がこの地も支配するため、一族を置いたのであろう。

以後、この地の安藤氏(のち安東を称する。)は湊氏とも称する。
その本家、十三湊の安藤氏は盛季が南部氏に敗れ、一時、蝦夷地に逃れ、後に盛季の次ぎの代の政季が湊氏の力で檜山城(能代市)に入る。
その後、檜山安東氏の当主愛季が、湊家を統合するが、愛季死後、子の実季と茂季の子通季が戦いとなり、最後は実季が秋田郡の支配権を確立する。
小田原の役後、領土を安堵された実季は、戦国時代の終焉を見て、山城の檜山城から、地域支配・経済支配に適した平城の湊城に本拠を移し、慶長4年(1599)から湊城の大規模な改築を行い、二重の水堀をめぐらした平城としたという。

慶長7年(1602)、実季は常陸宍戸に転封となり、かわりに佐竹義宣が入る。
しかし、佐竹義宣は狭く、また拡張の余地も少なかった湊城を廃棄することとし、慶長9年(1604)に久保田神明山の地に新たに久保田城を築城し、湊城を廃した。

城跡には元和6年(1620)土崎神明社が建てられてたが、遺構のほとんどは市街地となる。
右の写真に示す神社東側の公園となっている地とアパートの間の窪地が堀跡であり、公園側の地膨れが土塁跡というが、果たして本当なのだろうか。

羽川新館(秋田市下浜羽川)
羽川新館は新田義貞の一族という羽川氏の館である。
羽川氏は、応永年間(1394−1428)にこの地に入り、地名を採って、羽川氏を称し鮎川流域を支配した中小の国人領主の1人である。

始めは羽川新館の北東2kmにあった羽川古館に住んでいたが、戦国期になって羽川新館に移ったという。
なお、この館の名前はおそらく後世付けられたものと思われ、当時は何と呼んでいたのかは分からない。

羽川氏は同じ国人領主階級である由利十二頭と友好関係にあり、また、時には大勢力である安東氏に従って天正16年(1588)年の安東氏の内乱(「湊合戦」)にも出陣、檜山城の安東実季に味方したという。
しかし、きっかけは分からないのであるが同年、赤尾津城の赤尾津九朗の攻撃を受け、羽川新館は落城し、滅亡したという。

館は雄物川を挟んで秋田市街地の南方向、下浜地区にある。
羽越本線下浜駅の南東2km、その南で日本海に注ぐ鮎川の上流1.5kmの羽川集落の南、羽川氏菩提寺の珠林寺のさらに南に見える山が館跡である。
尾根式城郭であり、全長は400mほどか。
この山の先端上に東屋があり、「火の用心」の赤い看板があるので遠くからでも分かるかと思う。城のある山は南から北に張り出した尾根状の山であり、その尾根の北端部に築城される。

山の北先端下に駐車場があり、そこから登って行くと東屋がある公園がある。
ここが北郭@である。
この部分は標高40m(比高30m)程度、曲輪を利用してアジサイなどが植えられている。
この曲輪は多重に曲輪が重ねられており、面積としてはかなり広い。
切岸Aの急な勾配が見事。高さは8mほどあり、とても直攀は難しい。

なお、この館、「韮山館」ともいう別名がある。
「韮山館」の由来は、天正年間の城主、羽川小太郎義稙が切岸に韮を植え、敵が滑りやすいようにしたためと言われている。

北郭の周囲には畝状竪堀が10本以上存在したらしいが、新しい道が造られた時に破壊され、かろうじて2本程度が確認できただけであった。
北郭を南に行くと、西側に土塁があり、東側に曲輪が展開する。
この土塁は日本海方面からの風を防ぐための風避け土塁であろうか。

北の鮎川付近から見た館跡 @北郭は公園になっておりアジサイが咲いていた。 A北郭東の鋭い切岸
B 本郭は平坦で広い C 本郭北の土塁 D本郭南の堀切であるが・・藪

さらに尾根をあがって行くと本郭である。
この尾根筋に堀切があったと思われるが湮滅しているようである。
本郭Bは南北60m、東西最大40mと広い。

この付近の標高は約70m(比高60m)ほど。
北Cと南に土塁(櫓台)がある。
尾根の先に堀切Dがあり、この先が二郭というが、どう見てもただの山、頂上部に櫓が建っていたのかもしれない。
さらにその先に2本の堀切があり、そこが城域の南端である。